不動産売却・住み替え

実家を売却してリノベ資金にする — 相続物件の売却で気をつけたいこと

この記事でわかること

  • 実家(相続した家)を売却するまでの流れ
  • 売却の前に必ず済ませておきたい相続登記の話
  • 兄弟姉妹との話し合いでつまずきやすいポイント
  • 税金を軽くする2つの制度と、その選び方
  • 売却額をリノベ資金にするときの考え方

よし、今日はいつもと少し趣向を変えるぞ。コウカイ鳥が、あるご家族に取材してきたんだ。相続した実家をどうするか、そしてそのお金を自分たちのリノベ資金にするかどうか——多くの部員が一度は直面するテーマだから、じっくり見ていこう。

今日、話を聞いてきたのは

今日はこんな話を聞いてきたよ。

相談してくれたのは、アヤさん(30代・妻)。夫さん(40代)、小学生の姉ちゃん、年少の弟くんと4人暮らしのご家族なんだ。きっかけは、アヤさんのお母様が亡くなって、実家が空き家になったこと。「このまま持ち続けるべきか、売るべきか」という悩みから、話は思いがけない方向に進んでいったんだ。

※アヤさんご一家は、リノベ部に寄せられるご相談でよくあるパターンをもとに構成した、架空のご家族です。


コウカイ鳥がアヤさんのお宅を訪ねた日、リビングのテーブルには、実家の固定資産税の通知書と、不動産会社のチラシが並んで置かれていた。

「実家、その後どうすることになったんですか?」

「実は、売ることに決めたんです。そのお金を、今の家のリノベーション資金に回そうと思っていて」

「僕が言い出したんですけどね。せっかくまとまったお金が動くなら、ずっと先延ばしにしてた水回りのリフォームを、この機にやろうと思って」

隣で遊んでいた姉ちゃんが、ふと顔を上げた。

「おばあちゃんの家、なくなっちゃうの?」

「なくなるわけじゃないよ、思い出は残るから。……そう娘に説明しながら、自分でも実感が追いついていない部分がありました」

「売ると決めたけれど、何から手をつければいいか分からない」——これは、とても多くの人が通る道なのだそうだ。ここから、アヤさんご一家が実際にぶつかった壁を、順番に紹介していく。


① まず何からすればいいの?——相続登記という最初の壁

「不動産会社さんに相談したら、最初に『名義、お母様のままになっていませんか?』と聞かれたんです。それが何を意味するのか、分かっていなくて」

「実は、そこが最初の関門なんだ。不動産は、亡くなった人の名義のままでは売却できない。相続人に名義を移す『相続登記』を、先に済ませておく必要があるんだよ」

「正直、『そのうちやればいいか』くらいに思っていました」

「その感覚、よく分かるよ。ただ今は、相続登記は法律上の義務になっていて、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になる可能性があるんだ。2024年4月1日から始まった仕組みで、それより前に発生した相続もさかのぼって対象になっている。『昔のことだから関係ない』とは言えないんだよね」

「知らなかったです……。母が亡くなってから日が浅かったので大丈夫でしたが、もし放っておいていたらと思うとゾッとします」

「兄弟間の話し合いがすぐにまとまらなくても、法務局に届け出るだけで済む『相続人申告登記』という暫定的な仕組みもあるよ。ただしこれは一時しのぎで、話し合いがまとまったら、改めて期限内に正式な登記が必要になる。『売ると決めたら、登記も並行して進める』——ここは、まずセットで覚えておくといいよ」


② 姉との話し合い——「売る」までにあった一悶着

「実は、登記の前にもう一つ大変だったことがあって。実家の名義は私と姉の共有だったので、売却するには姉の同意も必要だったんです」

「共有名義の不動産は、原則として名義人全員の同意がないと売却できないんだ。相続した実家の売却で、一番こじれやすいのはここなんだよね」

「姉自身は『売っていいよ』とすぐ言ってくれたんですけど、母の家財道具や仏壇をどうするかで話が進まなくて。お金の話より先に、そっちで時間がかかりました」

「実は、そういう声はすごく多いんだ。お金の分け方より先に、『誰が何を引き取るか』という気持ちの部分ですり合わせが必要になる。ここを先に話しておくと、後の手続きがぐっとスムーズになるみたい」

(遠くから)「おばあちゃんの写真、私の部屋に飾ってるよ!」

「……そうやって、ちゃんと形を変えて残っているんですよね。その一言で、少し気持ちが軽くなりました」


③ うちの実家、いくらで売れるの?——査定してみて分かったこと

「話し合いが終わって、いよいよ査定です。正直、僕らは『実家だから』という思い入れもあって、相場より高く見積もっていた気がします」

「それも、あるあるなんだ。特に地方や郊外の実家は、都市部の感覚をそのまま当てはめると、実際の相場とズレやすい。だからこそ、1社だけでなく複数の不動産会社に査定してもらうのが基本なんだよ」

「私たちも不安だったので、一括査定サービスを使いました。会社によって得意なエリアが違うのが、比べるとよく分かりましたね」

実際にアヤさんご一家が利用を検討したサービスを、役割ごとに紹介する。

  • イエウール:提携している不動産会社の数が業界トップクラス。地方や郊外の実家でも、査定してくれる会社が見つかりやすい。
  • すまいValue:三井のリハウスや住友不動産販売など、大手不動産会社が共同運営するサービス。ブランドの安心感を重視したい人向け。
  • SUUMO売却査定:知名度が高く、一括査定を初めて使う人でも申し込みやすい。まず1社試したいときの入り口に。

「あと言っておきたいのは、査定を申し込むと、その後いろんな会社から営業電話がかかってくることです。『相場を知るために使うんだ』と割り切っていたので、負担には感じませんでしたが」

「そこは、事前に知っておくと安心だね」


④ 税金は「安くなる制度」が2つあるけど、選ぶ必要があった

「査定額が見えてきて、次に気になったのが税金でした。せっかく高く売れても、税金でごっそり持っていかれたら意味がないですし」

「相続した不動産の売却では、税負担を軽くできる代表的な制度が2つあるんだ。ただ、この2つは同じ不動産に対して、どちらか一方しか使えない

  • 空き家の3,000万円特別控除:亡くなった人が一人で住んでいた家を、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなど、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる。適用期限はこれまで税制改正で延長されてきており、直近では2027年12月31日までとされている(今後さらに変更される可能性もあるため、検討する時点での最新情報を確認したい)。相続人が3人以上いる場合は、控除の上限が2,000万円に引き下げられる点に注意。
  • 取得費加算の特例:相続税を納めた人が、相続開始日の翌日から3年10か月以内に不動産を売却した場合に、納めた相続税の一部を取得費に加算し、譲渡所得税を軽くできる。

「え、選ばないといけないんですか。どっちが得か、僕らで判断できる気がしないんですけど」

「正直、そこはケースバイケースなんだ。相続税をどれくらい納めているか、売却額や取得費の状況によって有利不利が変わる。実際に申告する前には、税理士に一度確認してもらうのがおすすめだよ」

アヤさん:

「私たちも最終的には税理士さんに相談して決めました。『思っていたより複雑だった』というのが正直な感想です。でも、知らずに進めていたら損をしていたと思います」

(制度の内容・控除額・期限は、税制改正によって変わることがあります。この記事の情報は執筆時点のものです。売却を具体的に検討する際は、国税庁や法務局など公的機関の最新情報もあわせてご確認ください。)


⑤ 手元に残ったお金で、いよいよリノベの計画へ

「税金や諸費用を差し引いた『手取り額』が見えてきて、そこからようやくリノベの予算を考え始めました」

「ここ、実はすごく大事なポイントなんだ。売却価格が、そのままリノベ資金になるわけじゃない。仲介手数料などの諸費用、税金、それから実家じまい(家財整理や解体の費用)まで差し引いた金額が、実際に使えるお金になるんだ」

「まさにそこ、僕らも最初甘く見てました。査定額を見て『これだけあれば余裕だな』と思っていたら、諸費用と税金でけっこう目減りして。結局、足りない分は住宅ローンの借り換えで少し上乗せすることにしたんです」

「実家の売却資金だけで全部まかなおうとせず、住宅ローンの見直しと組み合わせて資金計画を立てる。これも、現実的な進め方の一つだね。この辺りは、また別の回で詳しく紹介したいと思う」

弟くんが、リビングの床に広げられた間取り図をクレヨンで塗り始めた。

「ここ、ぼくのおへや!」

「そうだね、今度の家、あなたのお部屋も一緒に考えようね」

そんな光景を見ながら、アヤさんはこう振り返った。

「実家を手放すのは寂しい気持ちもありましたけど、そのお金で家族の新しい暮らしを作っていけるのは、なんだか救われる感じがします」


まとめ

コウカイ鳥が取材して分かった、アヤさんご一家がぶつかった壁は、この5つだった。

  • 相続登記を済ませないと、売却のスタートラインに立てない
  • 共有名義の場合、相続人全員の合意形成に時間がかかりやすい
  • 税金の特例はどちらか一方しか使えず、判断に専門知識が必要
  • 実家という思い入れから、相場感が実際とズレやすい
  • 売却額と手取り額にはギャップがあり、リノベ資金は手取りベースで考える

どうだったかな、部員諸君。実家の売却は、お金の手続きであると同時に、家族の歴史に区切りをつける話でもある。

アヤさんご一家のように、焦らず、でも先延ばしにしすぎず進めていくのが、後悔しないコツなんだ。次回は、査定サービスをもっと詳しく比較する回、それから住宅ローンの資金計画の回も予定しているから、お楽しみに。

「また色んな家を飛び回って、次の話も聞いてくるね。それじゃ、また今度!」

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